杉並区の市民グループと懇談

左からミイセの卯尾田氏、当会代表、ミイセの山中氏、同 川崎氏

入間小のケヤキを未来につなぐ会は12月3日、東京都杉並区西荻で活動する市民グループ「ミイセ」を訪問し懇談を行いました。ミイセは、2009年に保存が決まった樹齢200年のケヤキ(通称:西荻のトトロの木)の署名運動を行ったグループの流れを汲み、樹木保存運動の経験を有するのみならず保存後のケヤキを中心とした地域づくりに積極的に取り組んでいる団体です。懇談では、当会からミイセに西荻の事例のヒアリングを行うとともに、入間小のケヤキの状況について意見交換を行いました。ミイセのメンバーには入曽地域での取り組みについてご理解いただき、今後、入間小のケヤキを活かした地域づくりを見据え、イベントで協力いただけることで合意しました。イベントについては後日改めて詳細をお知らせいたします。

懇談の概要

【日時】

2022年12月3日(土)


【場所】

アトリエ・カノン(東京都杉並区西荻北4丁目15-13)


【出席者】

ミイセ:山中啓倭子氏、卯尾田和子氏、川崎三輪子氏
入間小のケヤキを未来につなぐ会:代表 福住勇矢ほか2名


【内容】

  1. 入間小のケヤキの紹介と当会の活動状況について
  2. 西荻窪のケヤキ(通称トトロの木)の紹介
  3. 西荻窪のケヤキの保存運動の経緯について
  4. 市民団体「ミイセ」の活動や地域住民の現在の取り組みについて
  5. 入間小のケヤキを活かした地域づくりに向け、協力の要請

西荻の大けやきについて

坂の上のケヤキ公園と大けやき(7月撮影)

東京都杉並区西荻の住宅街の中にある樹齢200年ほどのケヤキの孤立木(樹高約20 m、幹回り約5.5 m)で、通称 西荻のトトロの木として近隣住民から親しまれてきました。私有地にあったこの木は土地売却に伴ってマンションの建設計画が持ち上がり、2008年に伐採されることになりました。地域で大けやき保存の署名運動が立ち上がり、伐採直前に神事まで実施されましたが当時の杉並区長の決断で区が敷地を買い取り、大けやきを活かした公園「坂の上のケヤキ公園」(西荻北4丁目38-6)が2010年に整備されました。最終的に集まった署名は8,648筆。区の貴重木、景観重要樹木としても指定されています。公園内には花壇や落ち葉溜めがあり、住民同士の交流が盛んに行われています。

ミイセについて

西荻の大けやき保存運動の発起人となった山中啓倭子氏らを中心とする市民グループ。大けやきの保存決定後はそれまでのストーリーを絵本などにまとめて出版したり書店で朗読劇を催したりして、地域で語り継ぐ活動を行っています。同時に、継続的に公園の美化にも取り組んでいます。さらに、チャリティーイベントも行い、集まった寄付金で杉並区の姉妹都市である南相馬市を支援するなど、幅広い活動を展開しています。2018年と今年にはミイセ特別企画として奇跡のケヤキ写真展を開催し今後も継続していく予定。グループ名の「ミイセ」は「みんなでいきるせかい」が由来。

イオン、ケヤキと共存へ動き

12月12日まで開かれていた狭山市議会令和4年第4回定例会において、狭山市からケヤキ存続の可能性について示されたことがわかりました。三浦議員と衣川議員の一般質問中に市側の答弁で明らかになりました。伐根が絶対条件であるとするこれまでの市の姿勢が大きく変わったことになり、これまで署名や周知拡散にご協力くださった方々や関心をもって見守ってくださった方々に深く感謝いたします。しかし、イオンとケヤキとの共存が確定したわけではなく依然としてケヤキ伐根の可能性も残されており、私たちは今後も署名活動を継続してまいります。

同議会での小谷野剛狭山市長や都市建設部長の答弁によると、11月2日、市とイオン株式会社との包括連携協定締結の際に、同席したイオンリテール株式会社から「小学校跡地に残るケヤキを伐採せずに、ケヤキと共存した形で店舗建設に取り組む」との意向が市に示されました。市長は、現段階でその方針がまだ決まっているわけではないとしながらも、提案のあった機能(ブックカフェやキッズパーク)の維持、枝の落下などによる安全面の対策が事業者の責任で確保されることなどを条件に新たな提案を受けたとしています。現在関係部局で精査していて、最終的には、一度終了した入間小学校跡地利活用事業者選定委員会に改めて判断を求める考えです。

議会答弁で示された新たな提案は、安全のためケヤキを剪定して現在の位置にそのまま残し、ケヤキの枝張の範囲は土にした店舗建設を行うことになっています。市がこれまで重視してきたブックカフェやキッズパークは若干面積が減るものの機能は維持でき、当初開業が予定されていた令和7年3月末には影響がない見込みとしています。

市長は答弁で、ケヤキを切る切らないが争点ではないとし、公募の際に良い提案を受けるために伐根の条件を付け、その条件のおかげで今回の事業者から魅力ある提案が受けられた。伐根が条件でなければ、入曽の住民のアンケート結果に反するような結果になったのではと発言し、当初の伐根条件は必要だったと持論を展開しました。

三浦議員は12月2日の一般質問で、ケヤキの伐採は地域住民の根強い希望で、住民が深刻な不利益を被ることがあればケヤキを残すことには賛同できないと主張しました(地域住民の根強い希望については、私たちが行った戸別訪問結果と相違があります)。すべての責任を負う意味を事業者にはよく理解したうえで提案してほしいと釘を刺しました。他方で、包括連携協定で市との良好な関係を築きたいとの意思があることはよくわかっていると事業者に理解を示し、募集要項から変更があっても信義誠実の原則には反しておらず、十分に検討されたものであれば尊重すると自身の立場を示しました。

衣川議員は12月5日の一般質問で、ケヤキの樹木医の診断結果を質問しました。水はけが悪いなどの理由で樹勢は不健全に近いとされたものの、現地保存の場合は空間の確保や土壌改良などの対策が樹木医から提案されたことがわかり、ケヤキ保存に向けて事業者と協議するよう求めました。イオンからの11月2日の申し出について、企業理念から考えると納得できる提案だと評価し、地域の希望や署名が集まっている事実にも触れ、ケヤキを残した形での店舗にして欲しいと強く要望しました。

なお、今日までイオン側はケヤキの取り扱いについて市に度々質問や相談をしてきたことが私たちの調査で明らかになっており、条件は定かではありませんが、イオン側の提案は11月2日が初めてではないとみられます。市は今回の方針変更について、地域住民の声や署名が理由とは明言しておらず、イオン側からの申し出を理由としています。