伐根することで公募開始
狭山市は複合商業施設の誘致の際に、ケヤキの存在が妨げになると考えていました。入間小跡地利活用選定委員会で、ケヤキを伐根することが条件として決定され、2021年6月に複合商業施設の募集要項が公表されました。
残したいとの質問
市は、募集要項が公表されてから公募の締め切りまでに、応募を検討している事業者からの質問を受け付ける機会を設けました。この際、3つの事業者から、ケヤキを今の位置に残しての提案は受け付けられないのか、質問が相次ぎました。事業者によっては、「管理は当方で実施致します」とまで言い切ったケースもありました。公募の性質上、この3社の中にイオンが含まれていたかどうかはわかっていません。
狭山市はかたくなに拒否
市は、3社の質問に対して「移植しても根付く保証はなく」という従来の言い分を繰り返し、ケヤキをそのまま残すことに関して、質問に正面から答えることはありませんでした。パブリックコメントでもケヤキ存続の要望が多かったことを考慮すれば、市はこの時点で募集要項の立木要件(伐採・伐根の要求)を緩和すべきでした。ケヤキを切り倒す決定は変更されることなく、そのまま事業者(イオン)の決定と協定締結を経て今日に至ります。
このような「移植しても」と条件をすり替える回答は、その後、市議会での答弁や私たちの市への問い合わせでも度々登場しています。
イオンそよらの計画は?
現在公表されているイオンそよらの計画図面では、ケヤキの位置にも建物が計画されています。この部分はイオンのスーパーなどが入るメインの建物と自転車店やペットショップ、書店が入る別棟とをつなぐ、“渡り廊下”のような構造をしています。この“渡り廊下”は1階部分が横方向に吹き抜けた空間で駐車場と敷地内道路、2階部分が屋内のブックカフェと屋外のキッズスペースになります。つまり、建物の構造上も役割上も付加的な部分ですが、ここにケヤキが干渉しています。
もし、“渡り廊下”の幅がもう少し狭かったり位置がもう少し西(図面下方)に設計されていれば、ケヤキと建物との共存は図れるかもしれません。ケヤキを残せば、施設建設の際の大掛かりな伐根(地面に張り巡らされている根を除去すること)や木の処分が不要になるため、削れる費用もあります。
大木と共存した商業施設はあるの?
商業施設と樹木が共存している例は全国に数多く、近くではJAファーマーズ入間店(Aコープ)のイチョウの木(旧入間村役場のイチョウ)が該当します。
また、全国のイオンの中には、敷地内の樹木や大木を活用した魅力あふれる店舗づくりを実践している例が多数あります。
例えば、イオンモール東久留米(東京都東久留米市南沢)には、敷地内に高さ13メートルのアカマツの保存木(東久留米の名木百選)があります。維持管理は東久留米市がイオンに委託していますが、地域住民に喜んでもらえるよう、費用はイオンがほぼ全額負担しているそうです(関係者による)。日常的に落ち葉の回収をしている他、年10回程度造園業者を呼んで枝落としの検討や害虫のチェックをしていますが、イオンにとってはほとんど負担にならない費用だといいます(市との契約の関係で金額は非公開)。
また、イオンモール多摩平の森(東京都日野市多摩平)では、建設前の敷地にあった樹木のうち約50本をそのまま残し、多摩平の景観を守り続けています。モールの一角にあるケヤキの大木は、建物と一体的な空間を演出し、来店者の憩いの場になっています。